「やっべぇ…あいつ、待ってるよな…」

中居は歩いていた足を速めた。もう20分もあいつを待たせている。

ちっくしょう…あのプロデューサーの奴…










寒い日の夜には〜Side N〜












その日、珍しくスタッフとの打ち合わせも早く終わり、中居は早めに帰路に着こうとしていた。

家に帰ったらまず何をしようか…。

とりあえず、明日の撮りの構成をさらっと確認して、いっぱい飲んで、今日は早めに寝ようか…。

そんな事を考えながらスタジオの出口に向かうと、普段は絶対に会わない人物に会った。

「あ…」

「木村。珍しいな、帰り一緒になるなんて」

「そうだな…」

そんな会話をしながら中居の頭の中で、いつもなら絶対に思いつかないような考えが浮かんだ。

「一緒に…帰る?」

「……え!?」

木村の驚いた顔を見て、中居はハッと我に返った。

ななななな、何言ってんだ俺!?何自分から誘ってんだよ!!

なぜだか自分でも分からなかった。

しかしこの時、せっかく一緒になったのにこのまま別れてしまうのは寂しい…。

確かに中居は、こう思ったのだ。

しかしここで素直になれないのが中居である。

「なんだよ…。別にいやならいいんだけど」

「やややややっっやじゃねーよ!珍しいなって…ちょっとびっくりしただけ!」

あーぁ、嬉しそうな顔しちゃって。なんかこいつって大型犬みてぇ(笑)

でも、こいつの自分には無い素直さが、こいつと一緒に居て心地いい理由なんだろうな。

そんな事を考えながら木村と話をしていたとき、不意に後ろからスタッフに呼ばれた。

プロデューサーが少しの間、打ち合わせをやり直したいとの事だった。

木村と約束をしてしまった以上、行くのは気が引けたがここは仕事。断れない。

木村もそのことは理解してくれているようだった。

木村の了承を得て、中居は再度打ち合わせをするためにスタジオに戻ったのだった。



「中居ちゃーん、ごめんねぇ、わざわざ♪」

「いえ、仕事ですので」

プロデューサーを軽く受け流し、中居はさっさと打ち合わせの準備に取り掛かった。

しかし、明日の撮りの変更といってもプロデューサーが言い出したのは些細なことばかり。

そんなこと、明日でもよかったのに…。

中居には、わざわざ呼び戻された理由がいまいち分からなかった。



そんな打ち合わせも10分程度で終わり、中居は急いでいることを微妙にアピールしつつ立ち上がった。

「お疲れ様でした。では、また明日…」

「あっちょっと待って中居ちゃん。この後時間ある?」

「はい?」

「ちょっと二人で飯でも食べに行かない?」

……はい?なんであんたと、しかも二人っきりで飯食いに行かないと行かないんだよ。

とは口が裂けても言えないが、中居は前々からこのプロデューサーの

なんとなくいやらしい目つきが気に入らなかった。

もしかして、さっきのくだらない打ち合わせもこれのため…?

「ね?この間、いい店見つけたんだ。中居ちゃんと二人で行きたいなーと思ってたんだよね」

この一言で、中居はキレた。ガタッと音を立てて立ち上がると、TV用の満面の笑みでこう言い放った。

「すいません、今日は急いで帰りたいんですよ。僕の帰りを待ってる大切な犬がいるんでね」

この一言は、かなりプロデューサーを驚かせたらしい。

「えっっ!?中居ちゃん、犬なんて飼ってたっけ!?」

「えぇ、もうずっと前から。じゃ、失礼します」

こんなときも礼儀正しい中居らしく、丁寧に一礼をしてから中居はその部屋を出た。

いまだに首を傾げているプロデューサーの姿が見えたが、そんなの気にしていられない。

もう20分も木村を待たせている。最悪だ。

中居の足が自然に速まる。

走って、走って、木村の背中が見え始めたとき、

「木村っっ!!」

無意識のうちに、口が叫んだ。木村が驚いたように振り返る。

うわーー…耳真っ赤だ…寒かったんだろうな…。

「マジごめん…プロデューサー、話長くてさ…逃げ切れなかった…」

プロデューサーのと一件は口が裂けても言えない中居は、さりげなく嘘をついた。

「……うん」

……あーぁ、いじけてる(笑)

このいじけた犬の機嫌を直すのには、中居が素直になるより他に無いことは、中居は経験上学んでいる。

仕方ねーなぁ…。中居は心の中で苦笑した。

まぁ、こんな寒い日の夜には…あんな奴とじゃなくて、こいつと飲むのもいいかな。

…いや、こいつが、いいのかな。


―― END――











あとがき

すすすす、すいません!くだらない…(*_*;
こんなプロデューサーさん、実在しません!!(笑)
このお話、最初はまったく考えてなかったんですけど
なんか思いついたんで、書いちゃいました☆(おい)
木村君を犬呼ばわりって、そりゃ駄目でしょ中居君(笑)
最後に、こんな駄文を読んでくださって本当にありがとうございました!!
感想をいただけたなら、本当に嬉しいです!泣いて喜びます。

(07,06,09)