青い鳥
あいつはまるで、鳥のよう
やっとのことで追いついたと、つかまえたと思っても
すぐにするりと、俺の手から離れていってしまうんだ。
まるで、鳥かごに入れられるのを極端に恐れているかのように
「なぁ、お前って鳥みたいだよな」
楽屋で偶然二人きりになったとき、ふと頭に思いついたことを躊躇することもなくあいつに伝えた。
あいつは想像していた通り、あからさまに顔をしかめた。
ただ、その目は俺を見ることは無く、相変わらず台本に向けられている。
「…なぁ、聞いてる?」
「……」
「中居ー」
「なぁんだよ」
中居は、諦めたかのようにやっと台本から目を離し、俺のほうを見た。
「だから、中居って鳥みたいだよなっと思って」
「なんでだよ。どこが。顔?」
自分で言ったくせに、まるでそう言われたかのように俺の顔をキッと睨んだ。
「いや、顔じゃなくて…」
「あ、もしかして3歩歩いたら忘れるところとか言わないだろうな」
「それ、鶏だろ?」
「鶏でも、鳥は鳥だろ?」
「そうだけど…」
「ほら、やっぱりそうじゃん」
このままだと永遠に中居とのミニコントが続いてしまいそうなので、俺は続く中居の言葉を遮った。
「変な意味じゃなくて、鳥みたいに掴みづらいって所」
そういうと、中居は意味が分からない、とでも言うように首をおもいっきり傾げた。
「掴みづらい?」
「だってそうだろ?お前、本心なんて絶対話してくれないし。メンバーの中で一番何考えてるかわかんねぇ」
「……」
その沈黙が、中居なりの肯定であることは分かっていた。
そしてそれと同時に、今の俺の言葉が中居の気に障っていないことも察することが出来たので
俺はこの話の核心に触れてみた。
「もっと…素直になればいいのに」
その瞬間、中居の眉がピクリと動いたのが分かった。
しかし、その表情はすぐに柔らかな笑みへと変化した。
「木村…好きだよ」
「…え!?」
その一言で、一瞬俺の思考回路が停止する。
「な…何言ってんの?」
俺はおもわず中居の顔をマジマジと見つめた。
すると中居は、呆れた様にフゥっと息を吐いて目を細めた。
「お前さ、あんなこと言っといて俺が本当にそうなったらそんなにオドオドするくせにそんな事いうなよバカ」
「う…」
丁度その時、スタッフが俺達の楽屋をノックした。
「中居さん、木村さん。もうそろそろスタンバイお願いしまーす」
「あ、はーい。今すぐ行きます。ホラ、行くぞ木村」
「…おぅ」
いきなり甘い言葉をかけられて、そのすぐ後にあんなきつい言葉をかけられたら
さすがの俺もちょっと中居と顔を合わせづらいものがあった。
少し俯きながら、テーブルの上に雑誌を置いて立ち上がる。
すると、いきなり中居は俺の頭の上に手を置いた。フワリ、という言葉がぴったりな感じで本当に軽く。
「ま、さっきお前が言ったこと。たまになら考えてやってもいいぜ」
そうやってまたお前は、たったの一言で俺の心を動かすんだ。
自分の心は明かさないのに、人の心はいとも簡単に読み取れる
わがままで気まぐれな、青い鳥。
そんなんだから、俺はいつまで経ってもお前から目が離せないんだ。
― END ―
あとがき
まーた変なの出来ちゃったよコレ(笑)
どーしましょう。というか、このお話
所々怪しい単語が出て来ちゃっているんですが
いたって健全なお話ですよ。(あ、言い訳がましい?笑)
最初の部分のフレーズが書きたかったがための小説、
いかがだったでしょう。「鳥ってなんだよ。無理やりじゃん」
なんて言わずに、温かい目で見守ってくださいな…(苦笑)
(07.06.27)